「二十四年前はどうだろう」

「そのようナ前に何カあるのかナ?」

「己の何たるかを探している」

 シレアの言葉に反応を示し、その瞳を見つめる。

 しばらくの沈黙の後(のち)、長老は小さく溜息を吐き出した。

「記憶を辿ってハみタが……。赤子の記憶は無いよウじゃ。三十年ほど前ニ、人間の錬金術師が訪れタくらいカのう」

「錬金術師?」

 シレアは多少の残念さを見せつつ、錬金術師が何の用でこんな所にまで足を運んだのだろうかと怪訝な表情を浮かべた。

「あまり愛想がよいとは言えぬ者であっタが。今宵は楽しんでいカれるガ良い」

「かたじけない」

 ユラウスが深々と頭を下げると、もてなしの料理が運ばれてきた。