そこに在るものを尊(たっと)び、敬意を抱くことが重要なのだと養父から学んだ彼にとって、自身を中心に置く意識はあまりなかった。

 それだけなのだ。

 もちろん、自分の考えが正しいとも思ってはいない。

 人にはそれぞれ、やるべきことがある。全て同じという訳にいかないのは、当り前なのだから。

 ユラウスが言ったように、大きな運命の中心にいるのならば──自分にはどういった役割があるのだろうか。

 予期せぬ流れに考えはまとまらない。

 抗えないものならば、それを見届けてやろうじゃないか。