瞼を閉じて広大な大地に立つとき、意識は遙かな遠方を目指して拡がっていく。

 吹き抜ける風は、シレアの心をさらに遠くへ運び、訪れたことのない土地の景色までも映し出してくれるようだった。

 瞼の裏の景色を見たくて私は旅をしている。己の過去のことなど、付け足しに過ぎない。

「お前の心は、まるで凍てついた冬のようだ」

 ずっと昔に投げられた、仲間の言葉が脳裏を過ぎる。

 それに対する怒りなどなく、確かにそうだと思ったものだ。

 今でこそ友人も多くいるが、それでも彼を冷たい人間だと思っている者も少なからず存在する。

 されど、シレアの奥底の優しさを知る者がいる。

 その心にある気高さを知る者がいる。

 シレアはただ、己が理解されることを望んでいる訳ではないというだけだ。