[先日に爪が抜けてしもうての。人間はこういうものをよく飾りとして加工するであろう。我もそれに倣(なら)ってドワーフに作らせてみた]

「ほう」

 真珠のような艶と輝きにツタの彫刻がなされ、それを囲むように美しい金銀の装飾があしらわれている。

 金銀細工に長けた種族が手がけた見事な仕上がりに、流石だと見とれてしまう。

 彼らドワーフは主に炭坑を好み、背は低く男女共にヒゲが生えているという。

 鍛冶職人が多く、豪快な性格で強靱な体に似つかわしくない繊細な作業をし、酒をよく飲む。

 エルフほどに長寿ではないものの、人間よりは長生きだ。

[友人は多くおるが、そなたはその中でも美しい。それを持つに足る者である]

 その言葉に薄く笑みを浮かべる。

 男としては複雑な心境だ。

 ドラゴンは美しいものがとても好きで、種族の違いである美しさも理解していた。

 人間の容姿のみならず、彼らの持つ強い欲望にも興味を持っている。

 これほど個体差の激しい種族も珍しいと、ヴァラオムにとっては昔から関心の対象なのである。