マレストとは、どこの草原にも見かける草花だ。

 夏場には薄紫の花を咲かせる。

 清涼感のある風味で、魚や獣の肉の臭みを取るのに使われる事が多い。

 他にも解熱や酒など、粉末にして他の材料と混ぜ合わされ練って固めた虫除けの香にもされている。

 とはいえ、料理に使うには多すぎなのではと思うほどに薫りが強い。

 若干、尻込みしながらも口に含む。

「ぬ?」

 思っていたよりも美味しい。

 マレストの薫りが強いと思ったけれど、少しくせのある魚にはむしろぴったりだ。

「彼らの料理には癖の強いものが多いがの。不味い訳ではないぞ」

 ユラウスが得意げに語ったものの、五百年も前の舌の記憶など信じられる二人ではない。

 とりあえず笑っておくことにした。