「あっ、座ってください。宿帳持ってきます!」

 背中までの栗毛を後ろで一つに束ね、青いスカートに白いエプロン。

 目の色は双子と同じ空の色。

 さすが姉妹、顔つきも似ている。

 待っているあいだ、食堂を見回していたシレアは怪訝な表情を浮かべた。

「宿は彼女だけで回しているのか」

 その問いかけに、双子は無言でうつむいたままだ。

「両親は一年前に死にました」

 宿帳を手に戻ってきたカナンは声を低くする。

 長いあいだ病を患っていた母が他界すると、看病をしていた心労からか続けて父もその後を追うように、あっという間に亡くなった。

 身寄りのないカナンたちは、両親が残したこの宿屋を継ぐことを決意した。

「一人で切り盛りしているのか」

「あたしたちもお手伝いしてるもん!」

「これが手伝いだと言いたいのか」

 スリからの一連の行動を思い起こす。