「いらっしゃいま──せ!?」

 その整った面持ちに息を呑む。

 街には劇団もいて、何度か観覧したこともある。

 みんな化粧をして煌びやかに着飾っていたけれど、目の前にいる青年は旅人だろうか、それらしく汚れた衣服にも関わらず顔立ちのためか、まとう雰囲気まで浮世離れしているように思えた。

「すまないが数日、宿を頼めるか」

 見下ろされる瞳に言葉が出ない。

 それはまるで、金緑石(きんりょくせき)のように美しく、さらりと流れるシルヴァブロンドは微風にも綺麗になびくだろう。

 こんな人が本当にいるんだ──カナンは時間も忘れて立ちつくした。

「聞こえたか?」

「ハッ!? はい!? ごめんなさい!」

 見とれていたことと、客を立ちっぱなしにしていた恥ずかしさで頬を染めて中に促した。

 一階は食堂、二階が寝床という一般の宿屋の形式だ。

 宿屋によっては食堂兼、飲み屋にもなっている。