「万が一の事があったとしても、そなたたちに罪はない」

 外の世界は寧静(ねいせい)という訳はいかない。

 旅をするという事が、いかに危険なのかを知っているのだろう。

 かつてのアレサの父を思えば、それも当然かもしれない。

「私にはどうにもならない力の前で、気安く任せろとも言えない」

 そう返したシレアに小さく笑みを浮かべた。

 旅立ちを前に、アレサは集落と仲間たちを見回した。

 束の間そうして、心を決めたのか軽やかに馬にまたがる。

 それを確認したユラウスとシレアも、それぞれにまたがった。

 目線が高くなった事で視界がさらに開け、いよいよ故郷を離れる刹那に父の姿を思い浮かべる。

 アレサはその背中を追うように、馬の腹を蹴った。

 遠ざかる故郷を惜しみ振り返る。