「おぬし──」

「ひと晩、じっくり考えた」

「いいのか」

「全てを信じた訳ではない」

 かと言って、全てを嘘だとも思えない。

 ならば、共に進み確かめればいい。

 二人はそれに無言で頷き、白に近い月毛(つきげ)の馬を見上げた。

 その見事な毛づやに、彼の旅立ちを祝い無事であるようにと祈る仲間たちの意識を感じ取る。

 ふと、エルフたちの目が一斉にある方向に集中した。

 振り返ったシレアは、初めて外で見るキケトの姿に驚く。

 失礼とは思うが、彼が歩く姿はあまり想像出来ない。

「シレア殿。アレサのことをよろしく頼む」

 頷きで応えると、キケトは顔を近づけて耳元でささやいた。

「我が子のように接してきた」

 アレサは強い。

 しかれど、何があるかは解らぬ。