「彼にはそれなりの想いがあったのであろう」

「解っています」

 そう思えるようになるまでに、長い時間がかかった。

 危険な道程(みちのり)に息子を巻き込みたくはなかったのかもしれない。

 それでも、わたしの意思を問うてほしかった。

 そして、父と共に旅をしたいと素直に言えていれば、あのような結果にはならなかった。

 父と共にあるのなら、わたしは死をも悠然と受け入れよう。

 自分がシレアとどう関係し、見えない脅威と対峙して、どう苦しむのかは解らない。

 先の見えない事に不安は感じていても、シレアの言葉に心が強く惹かれたのは事実だ。

「キケト様、わたしは──」