「アレサ」

 振り返ると、エルフの青年二人が口角を吊り上げて近づいてきた。

「昨日はちゃんと見えてたか?」

 アレサはそれに、さして顔色を変えることはなかった。

 けれども、聞いていたシレアとユラウスは、なんとも皮肉めいた言葉だと眉を寄せる。

「わたしの母の血を馬鹿にするのなら、相手になろう」

 淡々とした物言いに、二人のエルフは小さく舌打ちして離れていった。

「見苦しいところをすまない」

「おぬし、まさか」

「母は人間だ」

 己の血を誇りにしているエルフの中にあって、他種族との間に生まれた子は時として辛い仕打ちを受ける場合がある。

 それはエルフだけではなく、他の種族にも起こり得る。

 混血の者の中には互いの血に心がせめぎ合い、葛藤を繰り返し堕ちていく者も少なくはなかった。