「あの状況では仕方ないでしょ。

でも……

誠さん、驚いたでしょ、やっぱり。

隠すつもりはなかったのよ。

でも、貴方が成人するまでは、真実は知らせない方が良いって、誠一郎さんが……

わたしもその方が貴方に接しやすかったし。

大人の都合ばかりで御免なさいね」


優しく笑ったお袋は、少し躊躇しながら、俺に小さく謝った。


「いや、今だからこそ、冷静に受け止めることができたんだと思うよ。

お袋はお袋だし。親父は親父で。

なんにも変わることはないんだって、今だからそう思える」


小さい頃は大きく見えたお袋の背も、もうとっくに追い越していた。