「そりゃもう、ロミオとジュリエットも真っ青よ。

なにせ、あの頑固親父をねじ伏せたんだから」


――そうだよなぁ~

爺さんは、強烈に古いタイプの人間だった。

彼が生きてたら、俺も剣道からフェンシングに転向なんて、許される筈もなかったろう。


「愛よ愛。

燃え上がるような恋の後には、愛が残るの。

愛が全てよ」


瞳が夢見る乙女になっちまった静さん。
こうなったら、もう、誰にもどうにも止められない。


俺は彼を一人残し、帰ることにした。


「ご馳走様でした」

「あ、付けとくわね」


ここでの飲食代は、俺の出世払いということらしい。

何せ、静さんが頑として受け取らないんだ。