「すいません。俺こそ、集中力足りなくて。そんなに先輩を責めないで下さい」
「蜷川、手当てするぞ。
更衣室へ来い」
目配せする先輩に続いて、足早に競技場を後にした。
早いとこ日向さんの目の前から消えることが得策だ。
マネージャーとしての彼女は、こと選手の怪我とか故障には口うるさいのだ。
この程度のかすり傷で騒がれちゃ、今後の練習にも障りが出る。
「蜷川、早く脱げ」
促されて、上着を脱いだ。
「傷は浅いな。まぁ、念のため消毒して絆創膏でも貼っておくか」
苦笑いしながら先輩が、僕の傷を覗き込んだ。
「女は血を見ただけで、煩いからな」
先輩はロッカーから救急箱を取り出し広げると、慣れた手つきで、ピンセットで摘まんだ消毒綿にオキシドールを振り掛けた。



