「先輩も双子だったんですか?!すごい偶然ですね。しかも先輩方、美男美女双子!」

「姉ちゃん!双子とか、今はどうでもいい!す、すみません!オレが先輩の頬を殴ったんです!」


修司に向き合い再び土下座する優斗くんの声は震えていた。

横では夢子ちゃんも頭を下げている。

優斗くんを立たせるフリをして、肩にある修司の手を振りはらった。


「いいのいいの!私きっとあれなのよ、殴られる呪いみたいなのがかかってるんじゃないかな!笑えるよね、だから優斗くんは何も悪くないよ。気にすることないの!」


とまどう優斗くんを立ちあがらせ、ズボンの汚れた部分を手ではらってあげた。

むしろ、少しでも楽しい時間を過ごせたことが何よりも嬉しい。

今ここで、ありがとう、と言ってしまうと展開がおかしくなりそうなので、心の中で言っておく。

「あの、先輩方のお名前は?」夢子ちゃんが遠慮がちに聞いてきた。


「私は山吹桃美、こっちが兄の修司」

「桃美先輩と修司先輩ですね、しっかりと覚えておきます!」


大きな瞳の夢子ちゃんはとっても可愛らしい。

「桃美先輩」だなんて、今の私からすれば人生捨てたもんじゃないな、とまで思えるほどに心躍る言葉だった。


「桃美、そろそろ帰ろうか」

「うん、そうだね。あ!優斗くん、あのね」


明日、先生に何を聞かれても、暴力はしていません、と答えるよう優斗くんに教え込み私達はそれぞれの帰路へついた。