「大丈夫?」

二回ノックを鳴らして、シロが言う。
私は、足で同じように二回ノックを返す。
頭の中じゃ、大丈夫も何も、自分がやったんだろ。とツッコミを入れていた。

シロが鼻で笑う。
その顔は、直ぐに想像出来た。
形の良い唇の口角を少し上げ、不敵な感じの笑みを作る。

何がそんなに面白いのか。
私にはさっぱり理解出来ない。
箸が転がっても可笑しいとか、そんな類なんだろうか?


まさに、若さの特権だな。と私は思った。


「聞こえてねぇって」

シャワーの音がする中、シロは話しを続けた。


「そう言えば、あんた何歳だっけ?」

(言えるか。そんな事。)

「言いたくないか…そんな事」

私の心のツッコミが聞こえてるかのように、シロがまた鼻で笑う。
そして、ふぅと長い息を吐き出した。
彼がタバコを吸う姿が目に浮かぶ。

白くて細長い節の目立つ頼りない指に、とてつもなく似合わないタバコを持ちながら、シロは何を思うんだろうか?



「俺、二十歳。つっても、少し先だけどね」

「はっ」

「ビックリした?」

「べ、つに…」


ある程度、想像はしていたが、曖昧な年齢に言葉が詰まってしまった。
少年と大人の間に居るシロと、全くの大人である私。
実にアンバランスである。

こうもリアルに差を感じると、凄く重い。

なのにシロは

「驚く事ないじゃん。そんな変わらんでしょ」
そう軽く言い放つ。
私は呆れて口を出す気にもならず、やっぱり若いな。と思った。