あれから眠れず、便箋を前にずっと考えていた。

シンプルに伝えたい事


私が伝えたい事はなんだろう…

今言える事は一つ。


あの日、彼と一つになれた事を間違いだと思いたくない─

それが、自分だけだと分かっていても。



ふと窓の外を覗くと珍しく雨が降っていた。

クリスマスイブに雨。
まるで、有名な歌のようだと思いながらシャワーを浴び、冷たい水で腫れた目を直して身支度を整える。

あれから幾ら探しても黒いワンピースは見つからず、無難なワンピースを着て化粧をし、白いコートを着て家を後にした。

地下鉄に乗り、街へ出て、どこにでもあるカラオケ店に入ると亜矢が待ち構えてたように走って来た。



「遅い」


「ごめん。て言うか、カラオケって…」


私がからかうように言うと亜矢は殴るフリをして言う。


「ブーケあげないからね」


「要らない。亜矢の手作りなんて、後々怖そうだし…」


「人の結婚式で言う事?」


「ごめん。行こ」


「うん」



こんな風に亜矢をからかうのも今年で最後になる。
来年の春に彼の家族が待つ千葉へ彼と旅立つらしい。

亜矢とは何気なく出会って友達にもなれたけど、これからもずっと、それは変わらないで居られると思う。
きっと、亜矢も同じ気持ち。

だって─


「あげる」


「え?」


「好きな人と…ね」


「ありがと」