若い刑事は不服そうな顔をしながら俺を引き連れた後、灰色の世界に閉じ込めると満足そうな顔をして言う。



「自分が何したか、そこで反省しろ」



見下すようで、嘲笑うかのような視線を投げ、刑事はさっさと帰って行った。



俺は一息吐き、壁にもたれ小さな窓を見上げた。


今頃、どうしてるだろ…

秋の柔らかな笑顔が目に浮かんで揺らぐ。
いくら目を閉じて払っても、その姿だけが鮮明に浮かんで離れなかった。

焼き付けた筈の身体さえも霞んでゆく…



振り切るようにその場を立ち、鉄柵の隙間から空を見上げると大粒の雪が降り注いで睫毛を濡らす。
必死に瞬きをしても雪は降り続き、ふと気付けば一面の真っ白な世界が広がっていた。



きっと…

きっと秋は俺を憎んで、普通の生活に戻って、いずれは子供なんて出来て、忙しい毎日に追われながら幸福を感じて、あの顔で笑う。


そして、俺はそんな事を時々想像して少しだけ嫉妬して、その度に思うんだ。



秋を愛してる




その想いは届く事なく雪に埋もれ、やがて真っ白な淡い思い出に変わる。

誰に気付かれる事もなく、ただひっそりと雪解けと共に流れて逝く─