その願いはきっと何処にも届かない。

空に当たって自分に跳ね返って来ただけ。
所詮、ただの[おまじない]でしかない。
それでも願わずに居られないのは、隣に彼が居るから…



結局、少しの確信に触れられただけで、他には何も手にする事が出来なかった。
私が手に入れた物は、強く握り過ぎて感覚の失った手と彼の名前。
そして、疑いようのない自分の正直な気持ち。

それを言葉にするのは簡単な事。
だけど、口にしてしまえば脆く、途端に壊れてしまう。
だって、私達は他と全然違う。


全部違う。


そう、出会い方から全て間違ってる。




「あき、手痛い」


「…ごめん」




東京タワーからまた歩いてホテルに戻り、部屋に入って彼に言われるままにその手を解いた。
それから私達は言葉を交わす事もなく、一通りの事を済ませ、別々のベッドに入って眠る。
その筈だった。




「あき」


「…なに?」


「隣、行っていい?」




彼に呼び掛けられ、その問いに少し戸惑いながら「いいよ」と応えると、彼は直ぐにベッドに潜り込み、私の手を握る。




「俺…全部、話すわ…」


握った手を指先で撫でながら彼は言った。


これから今までで1番長い夜が始まる─