モノクローム

ホテルから近くに見えてた東京タワーはかなり遠く、歩いて行くには結構な距離がある。
それなのに、彼は歩いてくと言ってぐんぐん進んで行く。

私は着いて行くのに必死になりながら、はぐれないように手だけはしっかりと握っていた。
そのうち歩く速度が遅くなり、やっと息も整えられた時、彼が話し始めた。




「俺さ…今日、誕生日なんだよね」


「…おめでとう」


「サンキュ。でもさ、二十歳になっても何も変わんないな…酒もタバコもやるし、博打はさすがにやらないけど、女とは結構付き合って来たし」



信号で足を止め、彼はタバコを口にして火を点け、青になると歩きながら話を続けた。



「一夜限りっつぅの?そればっかしてさ、大学に入って彼女と出会って、仲間つぅか友達みたいなのも出来たんだけどさ、みんなシロって呼ぶの。俺の名前はシラカワだっつってんのに。

それでもまぁいいか、なんて思ってたんだよね。あきと出会うまでは」




話を一旦締めるみたいに、吸い終わったタバコを携帯灰皿に入れて深い溜め息を吐く。

ふと気付けば東京タワーの側に居て、彼はそれを見上げて鼻で笑った。




「なんだ、こんなもんか。結構ちっさいな」



私は続きが気になって、ただ彼を見つめていた。