多分…俺はリリーを好きなんだと思う。
いや、好きと言う言葉が正しいのか分からない。
強いて言うなら惹かれてる。
だけどいつも空回りして、この気持ちに蹴りをつけるには当分時間が掛かりそう…




「時間経ったけど…」


「あいよ」


「…私が流すの?」


「他に誰が居んの?」


「分かった…じゃ、ながすよ」




俺はバスルームでリリーに髪を染めるのを手伝って貰いながら、どうしようか考えていた。
何とかしなきゃ、そう思うのに言葉にする事が多過ぎて、上手くまとまらない。

上手く組み立てられたとしても、伝える術がどこにあるのかすら分からない。
あるとするなら、それは俺がリリーを解放する時。




「もういいよ。後は自分でやっから」


「じゃぁ…向こうでテレビ観てるね」




その時が来たら、リリーはどんな顔するんだろう?

きっと幾らふざけても、あの柔らかな笑顔は絶対見せてくれないだろうな…


そんな事を考えながら頭を洗い、黒く染め上がった髪を見て鼻で笑った。



「眉毛、染まってねぇし」




間抜けな顔を殴るようにシャワーで鏡を流し、バスルームを出てリビングへ足を運ぶと、リリーは俺を見て口を開けたまま固まった。

どうせ似合ってないとか、可愛いとか、そんな事を言い出すに違いない。
そう思いながら黙って床に腰を下ろし、タバコを吸った。