モノクローム

「いい」

「なんで?」

「どうしても」




部屋に帰って来てから、ヘアカラーを勧める俺にリリーは頑なに首を横に振る。
茶色がかった髪はプリンと表現するより、斑の柴犬に近かった。
ちょっと手入れすれば綺麗な長い髪になるのに勿体ない。



「だから、どうして?」


なおも食いつく俺にリリーは深い溜息を吐く。
そして言いにくそうに口を開いた。



「…アレが来たから」


「アレ?」


「だから…女の子が月一回に…」




ヤバイ。

また、やった…



でも、あの時訊かなくて正解だった。
訊いていたら、リリーが向ける視線よりもっと痛い視線が突き刺さってたかもしれない。



「じゃぁ…それが終わってからって事で」


「…分かった」




なんか今の、凄く気まずく感じるのは自分だけだろうか…



「なんかさ…」

「なに?」

「今の、誰かが会話だけ聞いたら変な風に取ると思わねぇ?」



俺がそう言うと、リリーは暫く考え込むようにして、ふと笑う。



「かもしれないね」

「かもじゃねぇって。絶対そうだって」




リリーの顔はたちまち緩んで、「馬鹿みたい」なんてからかうように笑いを堪えていた。

俺はその顔に少しだけドキッとした。