どのくらい眠っただろうか…
ふと見上げるとリリーと目が合い、驚いた拍子に頭を床に落とした。
その鈍い音に、柔らかい表情がたちまち苦笑いに変わる。



「大丈夫…?」


「なんとか…」



とっさに出たのは爽やかとは程遠い作り笑いだった。
そんな顔を見られたくなくて、逃げるように冷蔵庫へ向かう。
だが、扉を開けて直ぐに閉めた。

気付けば異様に酒臭く、シャツも湿っぽい。
水を飲むのを諦め、バスルームへ行き、バスタブにお湯を張る。
それを見ながら、ぼんやりとしていた。


何だか腑に落ちない。

それは昨日の一件じゃなくて、もっと別な事だ。
それが何なのか全く思い出せない。


思い出そうとする度に、こめかみの辺りがズキズキと病んだ。
その痛みはそれだけのせいではなく、未だ鳴り続ける携帯のせいでもある。

重い足でリビングに戻り、リリーの手錠を外し、先に入るよう促す。
リリーは後でもいいと言ったが、何度も鳴る携帯を察し、不安げな表情を残してバスルームへと向かった。


きっと、リリーは俺達が喧嘩しないかとか、そんな心配をしているのだろう。
でも、それは避けて通れない事で、いずれはハッキリさせなきゃならない事だ。

だが、一から説明するのは疲れるし面倒だった。
面倒と言うより、自分でも説明のしようがなくて困ってる。と言ったほうが正しい。