今から遡る事、約半日ほど前。

私は、このフードを被った人物に監禁された。
世間は日曜日で、いつも行くスーパーが混雑する中、突然起きた出来事。



「動かないで」


背後からそう言われ、何かが腰に当てられた。
きっと服の袖でも引っ掛けたんだろう。
そんな事を考えたが、様子が違うのを直ぐに理解した。



「そのまま前向いてて。少しでも動いたら…死ぬよ」


「……」



ぐっと背中に力を込め、けして外さずに素早く私の右手に何かを巻き付ける。
私は、ひんやりとした感触に身震いしながら、じっと自動ドアに映る姿を見つめていた。

フードの影が顔の大半を覆い、そこから半分だけ覗く鼻筋とピンク色の唇。
その口角を微かに上げ、笑みを作る。
冷静かつ淡々とした笑い方だった。



「じゃぁ、行こっか」


行儀良いセリフが何の感情も持たず、淡い色した唇から放たれる。
手錠を掛けられたであろう右手はトレーナー中央のポケットに入れられ、有無も言わさず駐車場奥に停められた白いワーゲンまで導かれた。


車に乗らされるまで隙が無かった訳じゃない。
人も沢山居たし、ほんの少しの行動で誰かに気付いて貰えるかもしれなかった。

けれど、それは「かもしれない」と言うだけで、「必ず」と言う保証はない。


なぜなら、この監禁は〔計画的な犯行〕だからだ。