もしも、彼女が首謀者なら理由はただ一つ。
私が「逃げ出したい」と言ったからだ。
しかも、私が気付くように同じ名前にして。



確かに、私は逃げ出したい。そう言ったけど、こんな形は思っても居なかった。

どうして…



「シロって名前の男の子。貴女の知ってる人なんでしょ?」


私は彼女にメールをした。
でも、いつまで待っても返信は無かった。
それが何を意味するか、誰も教えてはくれない。

目の前で刻一刻と過ぎ行く時間を見つめる。
まるでカウントダウンのように、アナログの時計はゆっくりと次の時刻に変わって行く。

出来るだけ余計な事は考えないように、私はその時を待った。



午前0時。
どこからともなくアラームが響き、布団の中でシロがもそもそと動き出す。


「0時になったけど…」

「うん…」

「あのさ…」

「…なに?」


彼は布団からのっそりと出て、タバコを口にし、如何にも不機嫌そうに火を点けた。


「…なんでもない」

「あっそ…」



けだるそうにしてる彼に、何を訊いてもまともな応えが返って来るとも思えず、私はそれきり口をつぐんだ。

シロは半分も吸ってないタバコをもみ消し、体を引きずるようにして身支度を始める。
クローゼットから適当に服を選び、その場で着替えていく。
私はただ黙って、その様子を眺めていた。