「大船観音の妖精達がひとつになって、あんなに大きくなるのですか?それともその逆ですか?」

「逆だよ」

「では、大きい観音様は親分ですね!」
森田さんの質問は延々と続いた。

好奇心旺盛なのは良いが、違う世界にどんどん突入して行く。
年長者として心配ではあるが、仕方ない。私は誤魔化し続けた。

いい加減うるさいので牛丼屋に入って昼食をとった。
食べているうちは喋らなくなるだろうと思ったからだ。
効果は抜群であった。お腹が空いていたのか、大盛りを私より早く食べ尽くし、また喋り始めた。

「子分観音様は足がすごく速いので、見つけにくいですよ」

「へ~」

「暇なときは親分を見上げてボーっとしてます」

「そうですか」

「私、牛丼好きです」

「それは良かった」

「そう言えば、この前の歩行訓練で先輩にぶつかってしまいましたよね」

「え?」

「なんの仕事だったんですか?」

「あーいや、アルバイトだよ。色々やっているのさ」

「ご苦労様です。でもあれから私、いろんな所で先輩を見つけたんですよ。建物の影とか木の後ろとか…ゴールにもいました!でもすぐいなくなるのです。マボロシでしょうか?」

「うん…たぶん」