いつものように参道で掃除をしているとあのお茶漬け娘が大きく腕を振って歩いてきた。

どうしたのかと聞くと
「横浜から小田原まで歩く練習です」
と言う。
私は
「それは修行ですね」
と言ったがお茶漬け娘はズンズンと歩き去って行った。
そういえば私はあのお茶漬け娘の名を知らぬ。
命を助けた人の名を知らぬ。
まぁ、いいか。

するといつも参道を斜めに横切っていくあの青年が現れた。
彼の名も知らぬ。
青年はハンディーカメラを手に何やらブツブツ呟いている。
「おや、どうしたのですか」

「これは試練なのかイジメなのか一体何なんだ」

「それはきっと修行ですね」

「はい?修行?一体何のための何なんだ?」

と青年もそのまま呟きながらズンズンと歩き去って行きました。

皆さん忙しいらしい。でもそれはあまりよくない。
心を込めて頑張ればいいのです。

私はほうきに股がり本堂まで戻った。
その途中にさっきの二人のぽかんと口を開けた顔が見えた。