それだけでよかった






雨が降る。
梅雨だ。

窓を伝う雫が、またひとつひとつと落ちていく。

さすがに屋上には行けない。

その頃にはお互いに友達も出来た。
梅雨に入る直前までは一緒に食べていたお弁当も食べなくなって、私のおかずから、塩卵焼きがなくなった。

この1ヶ月で色々変わった。

「なーつーのっ。ねっ、冬樹くんのクラス行こっ」

「由香ひとりで行って来なよ、私は嫌だ」

「一時仲良しだったのに?」

色々変わった。

冬樹が、遠くなった。

「夏野さあ、冬樹くんに彼女が出来たこと、まだ落ち込んでるの?」

1ヶ月で色々変わった。
冬樹に、恋人が出来た。

私にしたら、最悪な学生生活のはじまりだった。
幼なじみという特権さえ使えないひとが出来て、戸惑ってもいた。

「そんなショック受けてるより、新しい恋しよっ。今度クラスの男子と遊びに行こうよ」

「……うん…」

由香のそんな明るさにさえ、救われない自分が嫌で。