それだけでよかった


放課後、掃除を終えて、図書室に向かう私の携帯が鳴った。

由香からだ。

《ごめん(汗)
今日ちょっと用事出来た(> <)
私帰るね、ほんとごめん》

ちょっとした喪失感。
他の友人もみんな用事。

「何かいたずらでもされてるのかなあ」

仕方なく、そのまま図書室に向かった。
とりあえず勉強すればいい。

何か違うことに、集中してればいい。

でもそれさえ出来なかった。

『……あっ…ぁ…』

ドアの向こうから、途切れ途切れに声が聞こえる。

『んんっ……は…』

『美紗……』

ドアの前で立ち止まった。
聞いたことのある声だ。

『ゃっ……ぁ』

『いや?』

信じたくない。
そう思いながら、そっとドアを開ける。
覗けるくらいの隙間から見えた光景に、私は思わず走り出した。逃げ出した。



『…ふゆ…きぃ…』