頭が危険信号を出している。 礼は押さえつけられた。 力にではない。 男の瞳にだ。 なぜ自分は声を発しないのだろう。 男の瞳は、陽春のそれとは違う。 冷たい―――。 「呼ばないの?」 男は言った。 守兵のことだろう。 礼は少し目を据えた。 男に気づかれないように、自分の太腿に装着した刃物に触れる。 その上から、暖かいものが降りてきた。 それが、男の手だと気づいたのは、一呼吸おいてからだった。