「それで?」
「王が帰ってきたんだ。みんなそっちに行った。」
「そうですか。」
自分には何もできない。
「王はお前を殺す…かもしれない。」
「わかっています。」
「祝融様の説得を期待するしかない。」
「私のことはいいのです。」
獅子は、笑った。
動揺しない男だ、と思った。
「大丈夫だ。
そっちは俺らで何とかするから。」
ここ数日で、獅子という男は、力だけではないことが張湯にはよくわかった。
壁に目をやる。
その向こうには宋春がいる。
「王は、動くかな?」
張湯より頭一つ分大きい、獅子を見上げる。
今は、王に賭けるしかない。