「明道が、こっちへ向かっているらしい。」
張湯は視線を床に落とした。
罪悪感があった。
自分たち兄弟のせいで、国の宝とも言える二人の命が落とされるかもしれない。
すでに、落とされていたらどうしようか。
こんなところにいる自分には、命を投げうって助けることもできない。
そんなことを考えるのも傲慢な気がした。
暗殺の日、張湯は血死軍を連れて、子州に向かっていた。
柴秦からの伝令をうけてのことだった。
楊太僕を血死軍警護して欲しいとのとこだった。
向かった血死軍は、自分を残して全滅した。
宋春は、それほどの力量を持っていた。
だが、彼はなぜ自分を生かしたのだろう。
それだけは、いくら考えても納得がいかない。