「“正式”には、と申しました。」 朱雀が正面から見つめてきた。 礼は、朱雀を見据えた。 「まだ、方法があるのね。」 朱雀は黙って頷いた。 希望はある。 彩夏は、生きなければならない。 いや、礼自身が生きていてほしいと願っている。 何もかもおいて来た礼と、何もかも失った彩夏。 似ているようで、どこか異なっている。 生きろというのは、礼のわがままなような気がした。 だが、もう白紙にはもどせないことも事実だった。