思えば、あんなに怒鳴られたのは、初めてだったかもしれない。



矜持の高い青年であったから、“いい子”で優秀な子どもを演じてきた。



怒られるようなことも、これまでなかった。



ただただ褒められたくて、尊敬する人に認められたくて、気づけば官位もへったくれもない仕事をしていた。



それでも、青年は幸せだった。



その人のために尽くすことが、生きがいだった。



家族から離れ、民から慕われるあの人の隣で、ずっと働いていた。



そして、当然のようにこれからもそれが続くのだと思っていた。



彼から巡察の命が下った時、青年は初めて反抗した。



ここ数年、賊徒が活発化している。



小さな村々を襲っていた賊が、その規模を拡大し、街町も襲撃するようになっていた。



青年たちが仕事場にしていた街も、標的の例外ではない。