「嫌だ!」



ーへっ?



突然の子どもがだだをこねるような声に、一瞬それが姫の声だとわからなかった。



聞き間違えか?



「嫌だと言っている!」



「「………。」」



姫は、従者にしがみついている。



方狼も黙ったまま姫を凝視した。



少女の一面。



それもそうか。



従者がいなければ何も出来ないのだ。



一人になることに不安を覚えたのか?



それとも、現実が見えたのか?



「従者といえど、そちらのお方もかなりの身分の方でしょう。
悪いようにはしません。
どうか落ち着かれませ。」



栄楽は宥めるように言った。



それは、自分をも冷静にさせた。



ーこんな小娘に、何を手こずっているのだ!
我々の計画を、潰させはしない。



「姫様、この従者と共にいるために、どこまでできますか?」



誇り高き愚かな姫の答えは、決まっている。