「それについては、私に考えが。」



獅子をどうするか、花英は予め考えていた。



そもそも、獅子は王と目的が違う。



第一、獅子は王に忠実ではない。



始めに考えていた計画とは異なってしまったが、手はある。



王嫌いな獅子が、王側に歩み寄ったからだ。



それは非常に良い展開だった。



「やはり、我々は別行動を取りましょう。」



その選択は、王を連れ戻させないが、獅子という強手の身兵を置けないことになる。



「何でだ?」



獅子の当然の疑問である。



「あなたと私は、州境で顔が割れてしまったでしょう?
それでは姫が潜入できません。」



「確かに。」



「だが、獅子の腕は欲しい。」



祝融が言った。



「だからこそです。
我々の任務は姫を連れ帰ること。
姫が潜入してくだされば、我々も中にはいるしかありません。」



「じゃ、この状況は?
まさか、無かったことにするのか?」



「いいえ。
それはもちろん……」



「こういうことだろう。」



祝融は花英の意図を汲み取っていた。



「おいおい、お前ら……」



獅子の周りに陣が浮く。



「その陣は六刻で解ける。
まぁ、今回は劉巾がいないからな、時限式だ。」



祝融が口角を上げながら言った。



獅子は再び祝融に足止めを喰らったのである。



「何でオレばっかなんだーーー!!!」



獅子の声が、空高く舞い上がったのだった。