「私は、もっと苦しまなくてはならないの。
民たちの憤り、悲しみ、虚しさ…そういうものをこそ、受けとめなければならない。
それは同時に、私のエゴでもあるわ。
何か出来るのではないかという、期待。」



自分はこの姫に、何と返せばよいのだろうか。



「そのエゴなくして私は私を名のれない。
私が他の民と何が違うか?
何も違わないのだ。
このエゴこそ、私を私たらしめる。」



太陽が眩しかった。



砂漠には慣れているが、どこの地よりも輝いている。



苦しいほどの光。



目を背けたくなる。



それが、王という存在なのか。



陽春が慕ったのは、この光なのかもしれない。



「ならば、私も貴女の駒としてお使いください。」



「駒?
まさか。
貴女は私の力になって。」



「ほー、言うようになったじゃん。」



「獅子、貴様もいい加減にしろ!」



「まーまー、落ち着いて、赤。
で、あんたも勿論協力してくれるわよね?」



「「あっ。」」



獅子は王を連れ戻す任務としてここへ来たのである。