「なぜ、お前は楊太僕のそばにいない。」


「私、一人ではだめだと、楊太僕はお考えです。
それゆえ、柴秦様をお待ちしておりました。」



顔は見えないが、その口調は自分一人でもよかったと言いたげだ。



「しかし、私一人いたところで…」



「三日、柴秦様と私は同じ担当場所です。
その間に作戦をお立てくださいますよう。」



青年は、後ろ手で紙切れを渡すと、自然に背後を離れた。



それが気配だけで伝わる。



―…三日。



急速に頭が回転し始めた。



楊太僕は自分を待っている。



労役に着いてから初めて、夕日を見た。



真夜中、牢獄の中で紙を開いた。



転々とある灯籠の光を頼りに、紙を開いた。



地図だ。



どうやら、この砦の地図らしい。



印が二つあった。



小さい部屋の方が楊太僕、広間が頭領の場所だ。



―どうする。



ここには二人しかいない。



二人でどうやって助け出せばよいのか。



撹乱する者たちが欲しい。



しかし、それは望めない。