黄国から送還された礼は、以前のように大々的に迎えられた。



以前とは違い、その場には朱雀がいた。



亡き劉向(りゅうこう)の後を継いだ劉巾という者が手を引く。



赤天殿を出た礼は、朱雀だという目の前の人物をまじまじと見た。



―びっ、美青年…



人払いをした部屋で、朱雀は礼に跪いた。



「………。」



朱雀は、黙りこくっていた。



いざ礼を前にすると、朱雀は考えに考え抜いた文言すら忘れてしまったのだ。



やっと吐けた息に乗ったのは、言葉でも何でもないかすれた声。



―何か言わなくては。



朱雀は焦り始めた。



けれど、浮かんだ言葉は全て薄っぺらいような気がして、もう本当にどうしてよいのかわからなくなっていた。