この猫は、各地にある黒猫の社に奉納される。 猫はこの国では不吉な動物だ。 それがあえて売れるのは、この猫が不幸を吸い取ってくれると民は信じているからだ。 社で猫は焼かれる。 焼かれた猫が炭になって黒くなることが、黒猫の社の由来だ。 猫が焼かれることで、不幸なことも焼き尽くされ、幸せが訪れるという。 馬鹿げている、と猛広は思う。 だが、それにすがらなければならない民が多くいることも事実だった。 人が集まってきた。 夕刻までは座る暇もなさそうだった。