ただそれだけ。 逢いたくて、走った。 幸せな街並みを、今なら落ち着いて見ることが出来る。 温かさは、こんなにすぐ傍にあるものだから。 本当は仕事が残っていた。 そんなこと、知らない。 "家でやります!" そう全ての書類を持ち帰ろうとした俺に、みんな渋い表情を浮かべたけれど、一人だけ味方をしてくれたのは社長だった。 "帰ってもいいぞ" 普段お堅い社長が見せた、あの笑顔と優しい口調を、俺は一生忘れない。