修二は、一歌の顔を真っ直ぐに見てくる。
こんなふうに見つめられたら、例え好意がなくとも、鼓動は早鐘を打つ。
一歌は落ち着きのない胸を軽く押さえた。
頭の中がぐるぐると回り、鼓動は早い。
どうにも冷静な判断が出来なくなりそうだった。
「俺と付き合えば、君は間違いなく、売れるチャンスを手に出来る」
一歌はいつもより数倍多い瞬きをしながら口を開いた。
「ど、どういう意味ですか?」
やはり、思考は正常に働かず、修二の言葉の答えは導き出せない。
「だって、俺と付き合ってる、て週刊誌にスクープされたら?」
一歌はそこまで言われ、ようやく答えを導き出せた。
「……嫌でも注目される?」
正解を口にした一歌に、修二はよく出来ました、といった笑みを浮かべた。
一瞬、一歌の心は揺らいだ。
売れるチャンスが、目の前にぶら下がっているのだ。
掴めるものなら、掴みたい。
釣られる前の魚も、こんな気分なのだろうか、と一歌はどうでもいいことを考えた。
目の前にぶら下がる餌。
空腹状態では、殊更美味しそうに見えるだろう。
だが、もしかしたらそれは、釣り人が垂らしているものかもしれない。
食い付いたら最後……て、違う。
一歌は脳内に巣食い始めた、どうでもいい妄想を振り払った。
それと同時に、肝心なことが頭の中に入り込んだ。
「だから、俺と大恋愛してみない?」
修二はにっこりと笑いながら、だめ押しのように言った。
一歌はそれで完全に我に返った。
違うのだ。
そんなことで、自分の名前が売れたとしても、意味などない。
何故なら、自分の力ではないからだ。
でも……、とまた心が揺らぎ始める。
一歌は決心をして、口を開いた。

