一歌は舞台袖で、出演者の人達の話を聞いていた。
戦争がテーマの映画の為、皆、口々に、戦争の悲惨さ、意味のなさ、命の大切さを語っている。
修二は主演なので、一番長い間、マイクを手にしていた。
こんな間近で修二を見るのは久し振りだった。
見ることがあっても、テレビ局で見掛ける程度で、会話を交わすこともなかった。
最後に話したのは、あのドラマの打ち上げの時だ。
別れ際に、「これからだ」と言われたのを、一歌ははっきりと覚えていた。
一歌はその言葉通りに、前を向いて歩んできた。
修二に認めてもらえる歌手になる為に。
大勢の人に、いい、と言ってもらえる歌手になる為に。

