「一花っ!!」
あたしは思わず叫んだ。
「お母さんっ」
一花は呆然とした男の腕の中からすり抜け、あたしの元へ駆けて行った。
「お母さ~ん、怖かったよぉ……ヒック、ヒック」
泣きながら一花はあたしに訴える。
「多美!!一花ちゃん!!」
「智美さん!」
酔ってたんじゃなかったのか!?
「一花ちゃんはあたしが家で預かっておくわ。多分は一人で平気?」
「うん、ありがとう智美さん」
「んじゃ後で」
智美さんは一花を連れて山を下りて行った。
男が逃げようとしている。
「待て!!」
あたしは男の腕をつかんだ。


