3人の前を通り過ぎようとした刹那──突然ベリルが立ち上がり、まず目の前の男に右膝を食らわせた。

「わお!」

 アユタは素早い彼の動きに嬉しそうに声を上げる。

 曲げた膝を今度は右に立っていた男に伸ばして蹴りを入れ、左から駆けてきた男に回し蹴りを喰らわせた。

 見事にそれぞれの急所に入ったらしく、男たちは立ち上がれずに床に転がったままベリルを苦々しく見上げた。

 服装はまちまちだが、顔つきは一様に厳(いか)つい。

 電車が駅に到着し、待っていた客が中の状況に驚くが、そしらぬ顔で降りるベリルの後ろをナユタとアユタは追いかけた。