2人の間には微妙な空気が流れている。近づこうとする彼女と距離をおこうとする彼の意識は、空中で火花を散らすかのようにせめぎあっていた。

「あ」

「え」

 ベリルが目を向けた先に目を移す。

「あっ!? ベリル!?」

 顔を戻すとベリルの姿が消えていた。

 辺りを見回しても、彼の毛ほどの気配も感じられない。

 そもそも、ベリルの気配などナユタに解るのかという所はさておいて。

「……やられた」

 ガックリと肩を落とし、溜息と共にうなだれた。