むしろ、そうやって供物のように体を差し出されることは、彼の哀しみを生むだけに過ぎないんだ。

 でも、あたしたちはあなたの温もりが欲しい。

 その優しさに触れたい。

 そう思うことが罪だとしても……少しでも、あなたに近づきたい。

「忘れない」

「!」

 突然、発せられた言葉にベリルが振り向く。

「忘れないから……あたしには、それが幸せだから」

 忘れてしまう方があたしは幸せじゃなくなるの。

 だから、わかって。

「……」

 切れ長の瞳を丸くして彼女を見下ろした。