命は、彼の手をすりぬけて落ちていく──その手に留まるのは己の命のみ。

 自分は人間であると発したそばから、笑いがこみ上がる。

 守りたい命、守れなかった命──それを背負い、生き続けていく。

「ベリル……?」

「!」

 シーツを体に巻き付けたナユタが、不安そうに近づく。

 見上げる瞳に笑みを浮かべ、キスを与えた。

「ベリルは悪くないよ」

 光の運河に照らされたエメラルドの瞳が、ナユタには愁いを帯びているように見えてチクリと胸を痛める。