「10年ほど前に事故に遭遇してね」

「!」

 ベリルの目前でその事故は起った。

 対向車線の車がスピード超過でハンドルを切り損ね、彼の家族が乗っていた車に激突した──駆け寄って確認したが、運転していた父親と助手席にいた母親はすでに息はなく。

 唯一、後部座席にいた彼だけはなんとか助ける事が出来た。

 しかし、心の傷は深く……誰にも心を開かなかった。

 ベリルは彼をしばらく引き取り、少しずつその心を解きほぐしたのだ。

「関わってしまった以上、素知らぬ振りは出来ん」

「そうなんだ」

 凄いな……素直にそう思った。