「おやすみ」

 ナユタの耳に彼の声が聞こえて、遠ざかる気配に瞼(まぶた)を閉じる。

「おやすみ、なさい」

 ナユタが応えると、ベリルは小さく笑んで部屋を去っていく。

 そのドアをじっと見つめて、心臓に手を当てた。その鼓動は、まだ激しくナユタに動揺を与えている。

 間近にあった瞳はいつもよりキレイに見えて、頬や額に触れた唇も柔らかく……肌もすべやかなのにしっとりしていて、吸い付いてくるような若々しさがあった。

 ホントにいま何歳なんだろう? と考えずにはいられないが、やっぱり訊きたくない気がする。

「う……なんでかな。なんかちょっと悔しい」

 あたしの方が若いハズなのに! 別の涙を流しつつ眠りに就いた。